切恋~First Love~
1年生が終わり、あたしの前の順番の流菜ちゃんも終わった今。
遂にあたしの番。
周りでワーワーと応援が聞こえるけど、あたしはそんなの気にしてる場合じゃなかった。
神崎涼に見られてると思うと、凄いプレッシャーに襲われる。
何が何でも1位になる。
それが神崎涼が教えてくれた極意。
そっと、あたしと走る他クラスの顔ぶれを見る。
いかにも、『足速いです』って顔の人がわんさかいるんだけど・・・。
たかが借り物競走ごときにこんなに緊張するなんて、思ってもみなかった。
審判があたし達の様子をうかがう。
さっき佳耶に言われたことを、再度思い出す。
『1位とったら、神崎涼に褒められるかもよ』
ただの予想。
ただの推測。
「位置に着いて・・・」
確定してるわけじゃない。
だけどそれだけのご褒美で、あたしは頑張れる。
「よーい・・・」
そんなあたしは、性懲りもないバカ。
1%だけの確率でも、あたしはその1%に賭けてやる。
パンッ!!
切れのいいピストルの音と共に、あたしは走り出した。
借り物が書いてある紙が置いてある台を目指して、ひたすら走る。
台に着いたら、紙を取る争い。
そして、手に取った紙を勢いよく開く。