切恋~First Love~


借り物は・・・。


「『光るもの』?」


あたしは思わず拍子抜けした。


王道に、『好きな人』とか、『1番の友達』とかかと思ってたから。


でも『光るもの』って・・・アバウト過ぎない?


あたしがあれこれ考えてるうちに、他の子達は四方に散っていった。


ちょっと待って、だって『光るもの』?


「藤井ーっ、何してんだお前ーっ!」


神崎涼の声だけが、やけにはっきりと聞こえてくる。


他の人の応援なんか聞こえないのに、神崎涼の声だけが鮮明に聞こえてきて、余計プレッシャーを感じた。


『光るもの』って・・・太陽とか?


それとも涙?


こんなときに限って、ろくに思考が回らない。


待って待って待って待って。


近くにあって、光るもの・・・。


焦る気持ちを抑え、周りを見回す。


そして、ふと目にとまったもの。


・・・ええい、こうなったらイチかバチかだ!


あたしは運動不足極まりない足で、思いっきり校庭を縦断した。


「佳耶あぁぁーっ!」


叫びながら、2年7組の応援席まで突っ走る。


呼ばれた佳耶は、びっくりしつつもこっちに向かって走ってきた。


「南美、何であたし?」


「い、いいからっ、早くっ」


息も絶え絶え、佳耶の手を引きながら、今来た道のりをUターンする。


< 265 / 337 >

この作品をシェア

pagetop