切恋~First Love~


ゴール付近にはもう、1人2人他クラスの子がいた。

1人はでっかい箱みたいなのを持っていて、もう1人はバレーボールやバスケットボールをたくさん抱えていた。


「南美、もっと早く走って!あの子達追い抜けるかもよ」


え、もっと早くって・・・無理ー!


あたしが佳耶の手を引いてるはずだったのに、いつの間にか佳耶があたしの手を引いてるし。


足の速さが格段に違う、あたしと佳耶。


佳耶の速さにあたしが付いて行けるわけがない。


「あ、ラッキー!南美、あの子ボール落としたよ」


佳耶にほぼ引きずられる形になって、超が付くほど前傾姿勢になっているあたし。


その姿勢から無理矢理顔を上げてみると、確かにボールがいくつか散らばっている。


拾うの大変だろうな。


「佳耶っ、これいけるかもよ!」


「だね、あとちょっとだし!」


でっかい箱を持ってる子はもうすでにゴールしちゃったけど、まだ2位にはなれるかもしれない。


・・・もしかしたら、そんな気の緩みが悪かったのかもしれない。


「・・・いったぁ・・・!」


あたしは落ちてたボールに足をすくわれ、見事に転んだ。


「南美っ、もうバカっ!」


でも、何とかギリギリ2位でゴール。


あたしはゴールに飛び込んで、豪快にこけながらフィニッシュを飾った。


体育着は砂だらけ。


走り終えた時、流菜ちゃんに、


「ナイスファイトー!」


って言われた。


何にしても、今はとにかく上にジャージが着たい。


< 266 / 337 >

この作品をシェア

pagetop