切恋~First Love~


そうは思ったものの、どうにもできない。


気を取り直して、スタート位置についている男子に目を向ける。


並び順から見て神崎涼は3番目、かな。


各クラスのリレーメンバーの中でもひと際目立つ神崎涼。


背も高いし、何より身なりが派手だし。


他のものを見ていても、どうしても目にとまる。


無意識?


それともあたしが意識的に目で追ってるの?


「位置に着いて・・・よーい・・・」


答えは多分・・・・・・後者。


パンッ!!



相変わらず切れがいいピストルの音で、ランナーが走り出す。


「走れーっ!!」


「いけえぇーっ!!」


だけどあたしが見ているのは、誰でもない、君。


全校生徒の視線が、ランナー達に向けられていても。


あたしの視線はある場所に固定されている。


本番直前だっていうのに、髪の毛をいじってて。


そんな緊張感のないソイツは、本当に私服のTシャツのまま走るらしい。


靴は、今日の朝も履いていた、いつもの派手なハイカットじゃなくて。


誰から借りたのか珍しく運動靴を履いている。


ねぇ、分かってるかもしれないけど、ハイカットの方が似合うし、そっちの方がかっこいいよ。


周りはランナーを見て盛り上がってるのに、あたしは1人、静かに神崎涼を見てる。


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