切恋~First Love~
その後、あたしはやっとの思いで個室から出て、教室へ戻った。
久々に新鮮な空気を吸った気がする。
さっき聞いたこと、一応佳耶に言った方がいいかな。
そんなことを思ったけど、チャイムが鳴ったから、仕方なく席に着いた。
「・・・であるからー・・・。おーい、ここ大切だからなー」
5時間目、弱メンの社会の授業。
瞼が重たくて、頭がカクンカクンする、お昼過ぎ。
さっぱりとした秋の日ざしが教室に降り注ぐ。
授業を聞こうと思っていても睡魔には、到底敵わない。
授業には全く意識が向かないのに、さっきトイレで聞いたことにだけには頭が働いた。
女の子達が発した言葉の数々が、頭の中で螺旋状に渦まく。
気にしないように振り払って、また現れる。
ひたすら、その繰り返しだった。
岩が乗っているかのように重たい瞼を持ち上げて、横にいる神崎涼をチラッと見る。
机に突っ伏して規則的な寝息を立てているコイツには、なにかしらの変化も見当たらない。
さっきの女の子達の言ったことが嘘であると思っても。
やっぱりどうしても気になってしまうんだ。
大好きな人のことだから?
分からないけど・・・やっぱり気にしてしまう自分がいる。
あたしは5、6時間目の午後の授業、完璧すぎるほどに熟睡していた。