切恋~First Love~


帰りのホームルームが終わった後。


あたしは昼にトイレで聞いたことを、佳耶と流菜ちゃんに話そうと思っていた。


あいさつが終わってすぐに話すつもりだった。


だけどあまりにもお腹が痛くて、またトイレに行ったんだ。


あたし、今日のトイレの使用回数、全校生徒の中でベスト1位かも・・・。


なんてくだらないことを考えながら。


そうして、昼に行った時より格段早くトイレにバイバイし、教室に戻ろうとしていた時だった。


教室に戻る途中にある、いつしかあたし達3人がテスト勉強をした準備室から、声が聞こえてきた。


その準備室が何の準備室なのかは、未だに分からないけど。


普段誰も立ち入らない準備室から声が聞こえてきたのだから、誰だって不審に思う。


しかもその声が先生の声じゃなくて、男子生徒の声だったらなおさら。


あの時のあたし達みたいに、誰も使ってないと思って入ったんだろうか。


準備室の前に一瞬だけ立ち止まり、また足を進めようとしていたのに・・・。


「――――よな・・・涼も・・・――」


『涼』


そのキーワードを聞いてしまったから・・・。


その場から、動けなくなってしまったんだ。


この中には、神崎涼がいるの?


神崎涼の話をしているんだよね?


あたしは、自分の気持ちが抑えられなかった。


世に言う、『盗み聞き』。


あたしはスカートのポケットに手を突っ込んでケータイを取り出し、素早く開く。


そして準備室のすぐそばの壁に寄りかかって、ケータイをいじるふりをして準備室の中の声に耳を集中させた。


何て汚い手段なのだろう。


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