切恋~First Love~


ていうか、選択させる必要ある?


場所をいくつか指定する位なら、勝手に決めてくれた方が楽なのに。


「・・・どんなところが候補なんだろ?」


見ようと思って、ダンボールに近づいたものの、人が多くて写真が取れない。


バーゲンセールのワゴンに群がる、主婦を見ているような感じ。


「南美、どこ行きたい?」


後ろから、佳耶が来た。


『どこ行きたい?』


って言われてもなー・・・。


「あたし絵下手だしぃ・・・。何でも同じ気がする」


「ちょっと、描く前から諦めないでよ」


そんなこと言われてもなぁ~・・・。


「お~いっ!」


ガヤガヤしている教室の中で、優の声がする。


振り返ると、優とマナと流菜ちゃんがいた。


この3ショットは初めて見た。


・・・かなり新鮮。


「2人はどこらへん行くか、もう決めたん?」


「いや、まだ。写真が見れないからさ」


マナの問いに、佳耶が気だるげに答える。


「ああ、そうやな」


それからしばらく、あたし達5人はダンボールの周りから人がいなくなるのを、ただ突っ立って待っていた。


神崎涼達は、初めに来ていた人達にガン飛ばして、強引に割って入っていた。


さすが、としか言いようがない。


でもそんな姿もかっこいいと思ってしまう、あたし。


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