切恋~First Love~
10月◇2
ジリリリリリリッ
睡眠妨害はなはだしい目覚し時計を手で止める。
・・・今日は、修学旅行!
そう思うと、寝ぼけていた頭に自然とスイッチが入る。
いつもより段違いに薄暗い部屋。
電気を付けて、制服に着替える。
髪の毛もいつもより念入りにセットして、メイクもいつもより丁寧に施していく。
旅行バッグをかつぎ、部屋を出る。
そして誰もいないリビングを音を立てないように通り抜け、玄関に向かった。
玄関を出る直前、リビングの方から音がした。
当たり前だが、怖い。
恐る恐る振り返ると・・・。
「わあぁっ!」
パジャマ姿のお母さんがいた。
薄暗い中で立っていられると、誰だって驚くだろう。
「何よ、南美。・・・それより、もう行くの?」
「うん、いってきます」
「いってらっしゃい。楽しんできなさいよ」
お母さんは眠そうな顔のまま笑顔を作り、また寝室へと消えていった。
外に出ても、まだ太陽の光は見当たらない。
そりゃあそうだろう、なんせまだ6時前だから。
珍しい朝の風景を忘れまいと思いつつ、学校に向かって歩き始めた。
大きな旅行バッグを持っているから、今日は自転車が使えない。