切恋~First Love~
「まあいつものことだけど。お前これ飲む?」
そんな失礼な言葉と一緒に神崎涼があたしに差し出したものは。
「・・・えーと、何これ。あの、罰ゲーム用のアレ?」
・・・・・・なんなんだろう。
大きなグラスの中には、ひとことでは言い表せない色をした液体が入っていた。
液体っていうか、フローズンと言った方が近いのかもしれないけど。
ところどころなぜか泡立っていて、ドスい色をした液体の中には、よく見るとなにかがふよふよ浮かんでいる。
「いや別に罰ゲームじゃなくても飲めるけど。開発担当、俺と櫂と慎也」
見るだけでゾッとするそれから遠ざかりつつ、あたしは神崎涼にこう言った。
「飲まないっ!バカっ!自分で味見してからにしてよっ!」
王道のセリフだなーと自分でも思うけど。
そしてあたしはその場を後にした。
2日目の今日は午前午後を通して自由行動。
午後は3時までに戻ってきて、弱メンにはがきをもらい家族に送るために絵を描く。
・・・・・・えへへ。
部屋で荷物の準備をしながら、1人でにやけるあたしはもしかしたら変態なのかもしれない。
さっき神崎涼と話してた時、もろ嫌々オーラ出しちゃったけど。
・・・ほんとは、嬉しかった。
神崎涼と話せたこと、神崎涼に話しかけられたこと。
たまたまあたしがあそこを通って、たまたま神崎涼の視界に入っただけなのかもしれないけど。
マナでもなく、優でもなく、流奈ちゃんでもなく、佳耶でもなく。
たった1人の、あたしの名前を呼んでくれたことが、すごくすごく嬉しかった。