切恋~First Love~


タクシーに乗っているときに思ったこと。


「ねえねえ流奈ちゃん、これって絶対定員オーバーじゃないの?」


あたしは隣に座っていた流奈ちゃん耳打ちした。


助手席にじゃんけんに負けたマナ、後部席にあたしと流奈ちゃんと佳耶と優。


この標準サイズのタクシーに後ろ4人ってOKなんだっけ・・・?


「・・・さあ、運転手さん忘れてるんじゃない?」


そんな運転手さんはのんきに鼻歌を歌いながら、さも愉快そうにハンドルを握っていた。


あたしの中で、沖縄に対するイメージが新たに形作られた。


・・・ゆるい。




あたし達がタクシーに乗って約1時間。


時刻は11時過ぎくらいだった。


愉快な運転手のおじいさんに野口英世をぴったり7枚渡し、あたし達はタクシーを降りた。


そしてそこにそびえる真っ赤な門に目を見張った。


青い空に白い雲、という漫画的な表現がぴったりな空の下に。


両脇を緑の木々に囲まれた、真っ赤な門だけが妙に存在を主張しているように思えた。


のどかでゆったりとしたこの場所で。


独特の雰囲気をかもし出す門を目の前にして。


何か心に潜り込むものを感じながら、あたし達しばらく黙っていた。


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