切恋~First Love~
そんなドロドロした感情に自分が包まれていくのが嫌で、あたしは神崎涼たちから顔を逸らした。
いや、逸らそうとした。
首をひねって、完全に前を向きかけた、直前。
視界の片隅に、何かが映った。
神崎涼の隣で。
艶のある長い黒髪。
透き通るような白い肌。
清楚という言葉がドンピシャ。
控えめにはにかみながら、楽しそうに話しているあの子は。
・・・どっかで、見たことあるような。
・・・誰だっけ。
絶対見覚えあるのに・・・。
「南美ーっ、行っちゃうよーっ!」
あたしがいる場所の少し先の方から佳耶の声が聞こえて、あたしの思考は中断された。
それから5人で写真を撮ったり、風景を撮ったり、マナの変顔を撮ったりして。
近くのレストランでお昼を食べて。
4時にホテルに戻るまで、あたしたちは広く浅く巡った。
ホテルに着いた時の両手の紙袋は、いくつだったかな。
本当なら部屋でゆっくりくつろぎたいところ。
そんなあたしたちは予想通りハガキを渡され、半ば仕方なくタクシーに乗り込み、『平和の礎』へと向かった。
足くたくた・・・。