切恋~First Love~


時間が経つにつれて、どんどん威力を増していった睡魔との戦いに負けたあたしはどうしていたかというと。


「南美、着いたよっ。早く降りる!」


平和の礎に向けて走っていたタクシーの中で熟睡していました。


「・・・ふえっ・・・?」


どうやらタクシーの中で1時間半くらい時間を潰していたようだった。


夕方になって涼しくなってきた、でもどこか柔らかい風に髪をなでられながら。


あたしはおぼつかない足取りで道を進んだ。


「ってか、空赤っ!」


隣にいた佳耶が目を細める。


未だ残る眠たさでずっと下を向いていたあたしが目線を上げた、直後か、直前か。


一瞬、強い風があたしたちの間を吹き抜けて。


それと同時に、あたしは目を瞑った。


そしてゆっくりと瞼をあげて、だんだん広くなっていく視界に映った景色は。


「うっわああぁ~!!」


広い広い広い、緑の芝生と。


そこに規則的に並んでいる、平和の礎と。


緑の芝生の中にのびている、細くて白い道と。


茜色に染まった、大きな空だった。


何ともいえない調和に、大きな息を吐く。


もちろん、ため息なんかじゃなくて。


感嘆の、息?


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