切恋~First Love~
「この際やから、言うけどー。うちむっちゃ神崎涼嫌いなんだよね」
そうつぶやいたマナは、前々から優とそんな感じの話をしていたらしかった。
神崎涼は、マナと優が隣で話してる通りで。
チャラい、怖い、女好き、だらしない、冷めてる、気分屋、俺様、サボり魔。
つまり結論は。
とりあえず最低。
・・・でも、それでも。
たまに垣間見るわずかな優しさ、意地悪そうな笑顔、囁きかけるような甘い声、一緒にいる時のドキドキ、あたしを包んでくれた手の温もり。
それらを、あたしは確かに感じていた。
ほんとはもっといっぱいある。
表面のかっこよさとかだけじゃなくて。
君と関わってみて、初めて見ることができた片面。
・・・知ってしまったのだから。
君がどんなに最低で最悪な奴でも、それでも嫌になるくらい大好きなままで。
優とマナが話してることに共感しながらも。
『そんなことない』って否定する自分がいる。
あたしは神崎涼が好きなんだよって、マナと優に言いたくて。
でも言いたくなくて、言えなくて。
急に胸が締め付けられる感覚に襲われて。
神崎涼の姿が脳裏から離れなくなって。
なんだか目頭がやけに熱くなってきたような気もして。
とりあえず何だか頭がぐちゃぐちゃになってきたから、あたしは静かに目を閉じた。
うつ伏せになった状態で枕に顔を押し付けながら。
あたしは、温かいものが目から滲み出たのを他人事のように感じていた。