切恋~First Love~


「すいませーん」


悪びれる様子などは一切なく、ゆるい返事と共に教室に入ってきた神崎涼達。


今日一連のことを思い出すと、思わず舌打ちが出そうになる。


「あ、先生ー。俺教科書とか持ってきてないんすけど」


さっきと同様、のんびりとした口調でそう言う神崎涼。


な、何ですと?


どんだけ不真面目なの?


持ってくることくらいできるでしょ!


まあ新学期2日目に授業があるのもどうかと思うけどさ。


「え、教科書いるの?俺も持ってきてねえや」


あたしの斜め後ろ、つまり流菜ちゃんの隣の席の赤茶色の頭の奴も普通に『教科書持ってきてないぞ』宣言。


・・・まあ、あたしには関係ないんだけど。


勝手に何でも忘れちゃって下さい。


「はあ~、お前らなあ・・・。今日は隣の人に見せてもらえ」


隣の人、がんばれ。


心の中でつぶやいた時、あることに気づいた。


2人の隣って、佳耶と流菜ちゃんじゃない?


「ういーす」


返事をした神崎涼の隣を恐る恐る見てみる。


嫌々教科書を差し出そうとしている佳耶。


すると神崎涼は、


「俺、使わないからいい」


あっさり断った。


おいバカめ!


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