切恋~First Love~
「・・・まあ、考えておく。流菜って子には、南美ちゃんから言っておいて?」
「何を?」
「そのこと、あんまり広めるなって」
どことなく穏やかな顔でそう言うと、尾崎君は教室に向かって歩き出した。
広がっていく距離。
遠くから見れば見るほど目立つ、あの頭。
限りなく赤に近い、茶色の頭。
まだ流菜ちゃんの髪の色の方が茶色に近い。
尾崎君が教室に入った。
「続き終わりましたー」
離れた所から、尾崎君ののんきな声が聞こえた。
あたしまだ少しドキドキしてる。
あんなに男の子が近くに来たのは初めてで。
あんな風にされたのも初めてで。
次第に周りの教室がザワザワしてきた。
しばらくその場で窓の外を眺めていた。
別に風景なんて見ていない。
何となく、ボーッとしていたかったんだ。
それからあたしも、教室に戻った。
雑巾がけしてないけど、まあいいや。