【完】先輩と保健室で
「先輩っ…!?」
「こうした方が、あったかい…。」
ゆっくりとそう言って、先輩は何事も無かったようにまた歩き出した。
「………。」
喉がゴクリと音を鳴らす。
先輩は、この状況で何とも思わないんだろうか??
そうだ。
先輩にとって、私はしょせん“いい人”にしかすぎないのだ。
「………っ」
唇にグッと、力が入るのが分かった。
「……鮎川?」
「へ……?」
俯かせていた顔を上げて見ると、先輩が手を握ったまま下から私の顔を覗いていた。
「な、何か顔についてますか??」
「いや、ついてはない…でも」
「泣きそうな顔してる。」と言って、先輩は握っていた手を離し私の頬をそれで覆った。