レクイエム
「……」


セフィアの表情が曇る。何を考えているのかも分からない、深く、光を放たない暗い瞳。
地雷に触れてしまったのか。クーラはさらに重くなった空気を確かに感じた。
感情のなくなった、人形のような顔がこちらを見つめる。まるで機械のように、セフィアがゆっくりと口を開いた。


「母は…昨年亡くなりました。容態が悪化して…」

「そ、そっか…」


アレスは前を歩く二人を見て瞳を細めた。
うろたえている。セフィアの影を見た事がなかったから。
すぐに沈黙が辺りを支配し、ただ3人の歩く音だけが耳に入る。横目でセフィアを盗み見たが、俯いて表情が分からない。


「…セフィア…だったか」


アレスが珍しく自ら声を掛けた。と言うか自分から他の人に話しかけたのを初めて見た。…と言っても出会ってから日があまりにも浅いので珍しいも何もないのだが。


「はい」


セフィアもまさか彼に話し掛けられるとは思っていなかったらしく、不思議そうに振り返る。
その表情はいつもとそう変わらないものにっていた。
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