レクイエム
「うわぁぁああ!」


衝撃を受けた商船の乗組員達はよろけ、腰が抜けた。
ある者は手すりに掴まり何とか立位を保ち、またある者は床に突っ伏してなされるがままに転がっている。
操縦士も例外ではなく舵を取れない状態に陥っていた。

一方リヴァーズは海賊。海と生きる彼らにとってこれくらいの揺れはびくともしない。荒波でさえ揺りかごと大差ない。

先程の接触で怯んだ隙にリヴァーズは船を横付けさせ、離れないよう船同士をロープで固定。
足場となる板を掛けると海賊達は一気に乗り移り始めた。


「あぁ…終わりだ…」


商船の乗組員は絶望に満ちた瞳で事の成り行きを眺めていた。
リヴァーズに捕まった船は、金目の物を全てかっさらわれると有名だ。それはこの船も同じだろう。
次々に縄で縛られる同胞達を眺めるだけ。自身にもその番が回ってきたらしい。縄を持った海賊が乱暴に商人の腕を後ろ手に回し、縛りに掛かる。

コツリ、コツリ…

黒髪のポニーテールを揺らしながら女頭が近付いてくる。

コツリ。

目の前で彼女が止まった。黒いコートに身を包み、3分丈のスパッツを着用している。
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