レクイエム
人間が魔法を使うときは呪文を唱えることにより精霊たちの力を借り、準備段階となる。鍵となる言葉…つまり魔法名を口にすることにより初めて発動・行使できる。
それをさっきの魔族は呪文もキーワードもなしに発動させていた。
妙な動悸がナキを支配する。
辺りは炎に包まれているのに、そんな事どうでもいいように感じてしまうくらいに、虚脱感に襲われその場に座り込んでしまう。


――怖かったのだろうか。






今回は簡単に倒すことができた。実際に戦ってみて、常識外れの魔族を目の当たりにして、恐ろしく感じ始めた。

空が黒く染められていく。
ギィ、ギィ、ギィ。
上空から何かの鳴き声と、羽音が聞こえる。
力無く空を見上げてみる。


「う…そ……」


空が黒く染まっていったのは、陽が暮れたからではないのか。
彼女の目に映ったのは、数え切れないほどのレッサーデーモン。
もう動く力など残っていない。
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