レクイエム
ナキが動けないのを察知したらしい。レッサーデーモン達が群れになってナキ目掛けて一斉に降下する。


――終わりか…!


思わず目を閉じ、襲い来る痛みに構えた。
しかし、痛みは襲ってこなかった。
不審に思いゆっくり瞼を上げると、目の前に男が立ちはだかっていた。
細身の後ろ姿からして、クレンスではない。
目の前に大きな障壁を張り、レッサーデーモンの侵攻を食い止めている。
後ろで束ねた銀糸に見覚えがあった。


「失せろ」


低い声で吐き捨て、前に突き出して障壁を支えている両手を一度握り締めると、勢い良く広げた。
瞬間、レッサーデーモン達は灰となり消えてしまった。あの大量のレッサーデーモンが全て、だ。
何が起こっているのか訳が分からず、呆然とした。
ゆっくりと彼はこちらに振り返る。
昨晩、部屋で見たあの男だ。


「あ、ありが…」

「…ンの馬鹿!!!」


言いかけた礼を罵倒で止められてしまい、目を白黒させた。言われた事を理解するにつれ怒りが湧いてくる。
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