レクイエム
――私が、魔族…?


鼓動が速くなる。彼は自分があのレッサーデーモン達と同じだと言うのだ。
訳が分からない。
ナキの動揺を知ってか知らずか、追い打ちをかける。


「お前が成人したから、子孫を残す為お前を求めて魔族が寄ってきたんだ」

――やめて…

「俺はアレス。俺もお前と同じ魔族だ」

「やめて…!」


呼吸が荒くなり、酸素を取り込んでも取り込んでも足りない錯覚に陥る。
過呼吸を起こしかけている。唇が震え、手足の末端が痺れ、感覚がなくなっていく。


「お前を、迎えに来た」


とうとう崩れ落ちてしまった体を、アレスが受け止め支えてやる。

ポツリ、ポツリ。

夕立が降り始め、雨脚が強くなっていく。
街を襲った青い炎もじきに消えるだろう。
二人の体も容赦なく濡らす。
頬を伝うのは涙なのか雨なのかは分からない。
ナキは力なく湿っていく地面を見つめるだけしかできなかった。
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