レクイエム
「馬鹿が」

「うるさい…」

「お前を狙う魔族はあんな下級魔族だけじゃないんだぞ。いずれ高位魔族だって現れかねない」

「……」

「つまりお前が傍に居れば、共に過ごしている奴は巻き添えを食らう」


そいつのようにな、とクレンスを顎で指した。
現実を突きつけられ、表情が歪む。

自分が傍に居れば、仲間を不幸にしてしまう。
リヴァーズの仲間達の顔が次々浮かんだ。昨日まで皆で飲みあったというのに、遠い昔に別れたようだ。

また皆と航海したい。
お宝を求めて世界中を周りたい。
馬鹿やって、笑い合って…

涙が溢れて来る。
もう皆と笑い合えないんだ。


「少し、考えさせてほしい…」


それが、今ナキに出来る唯一の返事だった。


「せめてクレンスの目が覚めるまでは待って」


もう、結論は出ていた。
ただ先延ばしにしたい気持ちがあった。
仲間の顔を見るのはこれが最後かもしれないのに。
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