レクイエム
「あんたが豪商リグルーズよね」

「そうだ…」


商人の回答に気をよくしたらしい。ニッコリと微笑み掛けた。

──美しい。

それが彼女の笑顔を見た、リグルーズの感想だった。


「船の積み荷…全部もらうわよ」


どんなに美しくても、やはり彼女も海賊に違いない。彼女に見惚れたリグルーズは叩き落とされる錯覚を覚えた。
手際よく積み荷を海賊船に運び込む部下達に適宜指示を出している。
そこで1人の海賊が積み荷を抱えて彼女に駆け寄ってきた。
他の積み荷とは違い、小さめの木箱。
リグルーズはぎょっとした。


「そ、それは…!」

「お頭、この積み荷」

「何?クレンス」

「何かサイズも違うから中開けたんだわ。そしたら…」

「何が入ってたっていうの」

「やめてくれ!開けるな!」


クレンスと呼ばれた男が木箱の蓋を開いた。中に入っていたのは大量の白い粉薬。


「…麻薬ね。」

「お前さんこんなモンも裏で取引してたのかい」


粉末の入った小袋をリグルーズの目の前に押し付けるクレンス。
あぁどんな尋問を受けるのだろう。リグルーズを更にどん底に陥れる海賊の声が、またすぐに聞こえ始める。
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