レクイエム
ピルケースに入れてあったものが手持ちにたまたまあったので、それを宿についてすぐ全身に塗ってやったのが良かったのだろうか。
今日は顔色が良いように思える。それだけでどんなに救われた気持ちになっただろう。体も少し軽くなった気がして、ゆっくり起き上がった。

――1晩何も言わないままアジトをあけて、皆心配してるだろうな…


左手のソファーにはアレスの姿がない。
気持ちの整理はまだついていないものの、聞きたい事がいくつかあった。
昨晩湯浴みをしていなかった事を思い出し、今のうちに入浴を済ませることにした。





:*:・:*:・:*:・:*:



「話?」

「うん」





テーブルを挟んで置かれている1対のソファーに座り、向かい合った。


「何故私が魔族に狙われる?」


彼女が自ら話を切り出すとは。
それ程までに落ち着いたのかと、驚愕した。


「昨日話したはずだが?子孫を残すためだと」

「違う、そーいうのじゃなくて。女性と子孫を残したいっていうのは分かった。でも他の魔族の女性はどうしているんだ?適齢期が来るたびにこのように群がられるというの?」


彼女は彼女なりにこの状況をどう打開するか向き合うことにしたらしい。
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