レクイエム
昨日は虚ろだった瞳が今日は真っ直ぐな澄んだ光を宿している。


「まず魔族のルールから教えないといけないらしいな」

「魔族の…ルール?」

「あぁ」


魔族にも規律などがあるのか。小難しい事を言われるのではないかと思わず身構えるナキ。


「手短にお願い」

「出来るだけ努力はしよう」


深く息を吐くアレスを見て、話が長引きそうだと息を呑む。


「弱肉強食だ」

「へ?」


それだけ?と目で訴えると、頷くアレス。
予想以上の手短さに拍子抜けした。


「魔族は力こそが全てだ。弱き者は強き者に従うのみで、それは恋愛においても言えることだ。自分よりも力ある者に求婚された場合は断る事などできないし、子孫さえ残せば後は命を奪われる事だってある」

「じゃあ…」

「お前を襲ったのもその為だ。ただ18歳になるまでは手出し無用と決まっている」

「あたしまだ17歳よ」

「昨日がお前の誕生日だ」


ナキの誕生日はまだ3ヶ月ほど先のはず。この食い違いは何だろう、むしろ何で自分の誕生日が昨日だと言い張るのか不思議でならない。
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