レクイエム
深い溜め息を吐きながら、彼は重々しく口を開いた。


「……幼なじみだ」

「…あんたと、あたしが?」


意外にも近しい間柄だったんだ。あの悲しそうに見えたのは、幼なじみの事を覚えてなかったからなのか、と納得した。
3歳頃までの付き合いなのだから覚えていないのは当然と言えば当然なのだが、何となく罪悪感に駆られるナキ。


「ごめん…覚えてなくて」

「物心つく前にリヴェイラに来たなら仕方ないだろう。お前、名前は?」


アレスに言われて初めて名乗っていない事に気付いた。けれど、幼なじみなら名前くらい知ってるはずだ。怪訝そうに彼を見つめても考えを読み取る事が出来ないので、礼儀として一応名乗る事にした。


「ナキよ」

「…違うな」


アレスが知っているはずの名前と違う名前らしい。眉間に皺を寄せながら彼は否定した。


「クーラ」

「くー…ら?」

「海賊に拾われた時にでも付けられたんだろう。いくら物心が付いてないとは言え、幼い子供でも名前くらいは言えるとは思うんだがな」


意味深な発言をする人だ。何を言いたいのだろう。困惑するナキを見て更に付け足す。
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