レクイエム

街道にて

「信じらんない!」


クーラの怒号が暗い街道に響き渡る。
こめかみに青筋を立て、高い位置で跳ねる黒髪はまるで暴れ馬の尻尾だ。

銀糸を1つに束ねている青年は素知らぬ振りをしている。


時を遡ること約4時間前。彼女が旅立ちの決意をした時の事である。

路地裏から抜け出し大通りを2人並んで歩いていた。


「私を両親の元に護送するって事は、やっぱり魔界よね」

「あぁ」

「どうやって行くの?」

「……。」


いつも返ってくる質問の答えが今回はそうではなくて、クーラは不思議に思い彼の顔を覗き込んだ。
相変わらずの仏頂面だが、何故か頬を一筋の汗が伝っている。目で催促すると観念したかのように口を開いた。


「知らないんだ」

「…え?」

「リヴェイラと魔界を繋ぐ門の場所を知らないんだ」


まさかの知らない発言に硬直してしまうが、何とか気を取り直して歩き始めるクーラ。
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