レクイエム
「信じらんない!こんなテントも寝袋もないのにそのまま寝るですって!?」

「寝れない事もないだろ」

「寒いじゃない!つかそんなんじゃなくて、こんな所で寝るの汚いじゃない!」


最低限の準備もなしに野宿するのが耐えられないクーラはけたたましく騒ぐ。
野宿くらいなら何回かしたことあるが、寝袋もないのは辛い。


「あまり騒ぐと魔族が寄ってくるぞ」


アレスが警告しようとした瞬間、近くの茂みがガサガサと乾いた音が立つ。しばらく揺れた後、陰からレッサーデーモンが現れ、クーラはぎょっとした。


「ちょ!」

「だから言っただろうが…」


はぁ…と盛大な溜め息をついてアレスが前に出る。手を空にかざすと虚空から細身の剣が現れ彼の手に収まった。同時に地を蹴り、素早くレッサーデーモンと距離を詰めると脳天に剣を突き立てた。

鮮やかな手並みだった。
流れるような、まるで無駄のない動作。
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