レクイエム
あのレッサーデーモンが何も出来ないまま、また塵となり風に乗って消えてしまった。
頭に突き刺さっていた剣が支えを無くし、カランと乾いた音と共に地に落ちる。アレスが指を馴らすと剣は実体を無くし消え去った。

彼は何かを確認するかのように右手を握ったり開いたりしながらクーラの元へ歩き出す。


「どうかした?」

「…いや、やはりリヴェイラの空気は肌に合わないと思っただけだ」


言いながら彼は自らのマントを外してクーラに乱暴に放り投げた。


「寒さ凌ぎにはなるだろう。それで我慢して今日は寝てくれ。俺は見張っているから」


街道の脇にある大きな木を背もたれに、彼が腰を下ろす。なかなか気が聞く奴だなぁと感心する。
色恋には疎いが、こいつ結構モテるんじゃないだろうかと思う。
彼の元まで歩み寄り、クーラも隣に腰を下ろした。


「ありがとう」

「…さっさと寝ろ」


礼を言われ馴れていないのか不器用な言葉を返す。
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