レクイエム
「今晩和ー」

「…誰だ?」

「くせ者か?」


2人の門番が行く手を阻むように手に持った槍を×字に交錯する。
クーラは止まらない。


「セフィアはいるかな?ナキが来たと言えば分かるよ」


門番の目の前で立ち止まり、堂々と胸を張る。
すると、門番が槍を下ろした。続いてその頭を下げる。


「ナキ様でしたか。これは失礼しました」

「よくぞおいで下さいました」

「あはは。ディルアン、グレイ、久しぶり。顔忘れられたのかと思った」


ディルアン、グレイと呼ばれた2人の門番が頭を上げる。
クーラと呼ばれるようになり数日。既にナキという響きが懐かしく感じ、不思議な気分だ。
ディルアンが一歩前に踏み出し、クーラの姿を改めて確認する。


「申し訳ない。鳥目なもので」

「あぁもう陽が落ちたしね」


あははは、と3人が和気藹々と笑い出す。顔見知りのようだ。そこだけ空気がお茶の間のように出来上がっている。アレスは遠目からそれを見るのみだ。
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