レクイエム
クーラの姿を認めるなり、彼女──セフィアの大きな瞳は落ちてしまうのではないかと心配するくらいに見開かれた。


「ナキ姉様っ!」


セフィアが勢いよくクーラに抱き付く。後ろに倒れそうになるのを何とか踏ん張り、彼女の背に手を回し撫でてやる。

──セフィア。
彼女はユリスティア国の中でも特に有力なティアベール家の息女だ。
彼女が幼い時、船に乗っていた際海賊に襲われた。その時、海賊を撃退したのがリヴァーズだった。
その時に微力ながらもクーラも撃退を手伝っていた。歳の近いクーラの勇姿にセフィアが感動し、それ以来クーラによく懐くようになった。
クーラに久しく会えたセフィアはやけに嬉しそうだ。


「ジルチ、ナキ姉様にハーブティーをお願いします。長旅疲れたでしょう?どうぞ中へ」


クーラの胸から顔を離し、傍で控えていたジルチにお茶の用意を頼む。
「喜んで」と言葉を残して早速彼女は席を外した。そこで初めてセフィアはクーラの後ろに連れ人がいる事に気付いたらしい。アレスの事である。
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