レクイエム
「クー姉様、今日のお宿はお決まりですか?」

「え、あ、いや。まだ何も決まってないよ」

「じゃあ今晩我が家にお泊りになって」

「え、いいの?」

「えぇ。ティアベール家の当主である私が言うんです。遠慮なさらないで」


言葉に詰まるクーラだが、セフィア自身は全く気にしていないらしい。顔の前で手を組みながらやけにニコニコしている。そればかりか彼女は寝床も提供してくれるらしい。

クーラからすればありがたい話だ。しかしこんなお人好しで、財産を騙し取られたりはしないのだろうか。少し心配になる。


「早速お部屋の用意を致しますね」

「ありがとう。悪いね」

「いいえ、私はクー姉様にお会いできて嬉しいのです。だから出来るだけお役に立ちたいです…」


相手を心配するのはクーラだけじゃない。セフィアも同様にクーラの事を心配しているのだ。
見詰める瞳から切なささえ汲み取れ、胸が詰まった。
< 86 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop