夢追い兎
こういうときは直ぐ時間が経つ。
人と話すのは苦手だ。

1時間目の予鈴が鳴った。
体育と聞いていたけれど、私はまだここの体操服を持っていなかった。
この口実でサボりたいってのも事実だけど。

体育のサボリはたいてい一人だし、皆からかなり離れているのでトイレに行くふりをして歌いにいけるのだ。
ここは田舎だし、学校の裏にある山が響きそうだったので、早速歌いたいなと思っていた。

皆の誘いを適当に断って、体育の先生に連絡をしようと廊下に出た。
私以外の人は皆更衣室にいるはずなので、預けられた鍵でドアを閉めようと外に出た。

「わっ」
「わ"っ!!???」

「ななな・・ なんですか!?」
「はは、敬語だ面白」
誰もいないと思っていた廊下に、長いポニーテールの女子が立っていた。
「あの・・ 体育は?」
「サボリだよ当たり前じゃん。あんたもでしょ?」
ちょっと言い当てられたので黙ってしまった。
こういうテンション高い人は苦手だ。
話についていけなくなって、結局どんくさいレッテルを貼られてしまう。
「一緒に裏山行かない?あそこ音響くんだよ」
「音・・? あの・・  歌うの?」
「うん。それが?」


どうも私は勘違いをしていたようだ。
人はいないが歌う人は居る。
今回は一人じゃないかもしれない。
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