【コメコン】オレんちの兄さん1
でも、今回は違う。
兄さんが、オレに直接電話をかけてきた。
いつもなら意味不明な、それこそ暗号みたいなメールが送られてくるのに。
……もしかして、急用か?
(いや、それはないな)
頭を掠めた考えは、一瞬にして消えた。
今までも兄さんから連絡が来たことはたくさんあった、けど。
急用だったことは、一度もなかった。
例えば、傘を忘れたとか。
例えば、帰ったら手洗いうがいしろよ、とか。
思い返せば、わざわざ連絡してくるようなことじゃないのは明白だ。
でも、そういえば。
一度だけ、「会議で使う書類を忘れた」とか言って焦って電話してきたことがあったな。
だけど、それは兄さんの勘違いだった。
兄さんは、会議の日にちを間違って認識していたらしい。
実際会議はその一週間後で、その日は大騒ぎしたにも関わらず、何事もなく幕を閉じた。
今となっては笑い話だが、あの日の兄さんの焦りっぷりは、尋常ではなかった。
そんなに重要な会議なら、日にち間違えないだろ、普通。
そんなツッコミも出来ないくらい、その日はオレも精神的に疲れ切っていた。
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