海が泣く夜
第一章
甘い匂い
若葉香りたつ、初夏の訪れ。
窓を開けて空を仰ぎ、大きく深呼吸をした。
「おはよう。輝」
ただ真っ白で四角い空間に、寂しく置かれた大きなベッド。
そこに寝転ぶ彼に、小鳥の囀ずりのような声で朝の訪れを伝える。
布団から覗く青白い顔、目元のクマが、昨夜もあまり眠れなかったことを言わずとも語り出していた。
それでも、彼の笑顔は今日も明るく優しい。
「俺も空見たいなー」
柔らかな笑顔とは対照的な、沢山の管に繋がれた痛々しい体。
その管が彼の命を繋いでいるのかと思うと、外れるのが怖くて私は安易に動かせない。
カシャッ。
本物のカメラでもあまり出さないありきたりな効果音と同時に、携帯の画面に写し出された空。
「これで我慢してね」
雲もない空は写真に撮ると、ただ水で薄めた絵の具の青のようだった。
窓を開けて空を仰ぎ、大きく深呼吸をした。
「おはよう。輝」
ただ真っ白で四角い空間に、寂しく置かれた大きなベッド。
そこに寝転ぶ彼に、小鳥の囀ずりのような声で朝の訪れを伝える。
布団から覗く青白い顔、目元のクマが、昨夜もあまり眠れなかったことを言わずとも語り出していた。
それでも、彼の笑顔は今日も明るく優しい。
「俺も空見たいなー」
柔らかな笑顔とは対照的な、沢山の管に繋がれた痛々しい体。
その管が彼の命を繋いでいるのかと思うと、外れるのが怖くて私は安易に動かせない。
カシャッ。
本物のカメラでもあまり出さないありきたりな効果音と同時に、携帯の画面に写し出された空。
「これで我慢してね」
雲もない空は写真に撮ると、ただ水で薄めた絵の具の青のようだった。