海が泣く夜
 私達が出会ったのは、幼稚園に通っていた頃だった。

仲良くなったきっかけなんてものはない。

ただなんとなく話して、触れて、気が合っただけだった。

 当時の記憶は曖昧だが、きっとあの日も空は晴れていた。

果てしない青空に鼓動が高鳴るのは、あの日の空とリンクするからに違いない。


 私は単純に輝が好みだった。

単純馬鹿で、無邪気で、感情的で本当にどうしようもない。

しかし、私にはそれも全て輝いて見えた。

誰にでも優しい笑顔が、眩しくて仕方なかった。

 何かあればすぐに駆けつけてくれたし、涙も拭ってくれた。

強く抱き締めてくれた時の温度は、まだ忘れられない。

 しかし、輝を好きになってしまった私には、その優しさが逆に痛かった。

彼は本当に誰にでも優しい。

私はその『誰にでも』にしかなれないんだと思うと、悲しくて仕方なかった。
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