キミだけが私を


「詩歌なんて嫌いなの。大っ嫌い。消えちゃえばいいのに」


今まで誰にも打ち明けることのなかった感情を、すべて伊澤君にぶつけた。


「暗くて友達もいないくせに、どっちも顔は同じ。昔から、比べられるのが嫌だった」


とめどなく溢れてくる涙を、伊澤君はそっと拭ってくれる。


「そんなに嫌うなよ。暗くても、友達いなくても、別にいいだろ」


普段はクールで物静かなくせに、私の頬に触れる彼の手は、とても温かかった。




「俺、お前のこと好きだけど。


















なぁ、詩歌」


私は本当の名前を呼ばれ、ハッとした。


「和歌を演じるのは、もうやめろよ」


彼は気付いていたのだ。


私が和歌ではなく、詩歌だということを。


< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop