キミだけが私を
「詩歌なんて嫌いなの。大っ嫌い。消えちゃえばいいのに」
今まで誰にも打ち明けることのなかった感情を、すべて伊澤君にぶつけた。
「暗くて友達もいないくせに、どっちも顔は同じ。昔から、比べられるのが嫌だった」
とめどなく溢れてくる涙を、伊澤君はそっと拭ってくれる。
「そんなに嫌うなよ。暗くても、友達いなくても、別にいいだろ」
普段はクールで物静かなくせに、私の頬に触れる彼の手は、とても温かかった。
「俺、お前のこと好きだけど。
なぁ、詩歌」
私は本当の名前を呼ばれ、ハッとした。
「和歌を演じるのは、もうやめろよ」
彼は気付いていたのだ。
私が和歌ではなく、詩歌だということを。