代償としての私の特殊な能力
現実の私はベッドから手を差し出す。
遅れて主人公の視線が私の手に向かい、主人公は私の手を取った。
「美香のお父さん?」
「ああ、そうだよ。・・大変だったね」
そうだ、間違いない。
主人公は美香のお父さんだ。
「おじさん、美香は?」
主人公は視線を上げる。
そこには美紗子さんがいて、大きく頷いた。
「美香は・・まだ目を覚まさないんだ」
うつむくように主人公の視線は流れ、私の口元から包帯へと移っていく。
主人公はもう片方の手を伸ばし、頭を撫でるように包帯にかかる髪の毛をかき上げた。
「おじさん、わたし、目が見えるんです」
「ああ、良かったなぁ。手術は成功したそうだ」
「違うんです。いま見えてるんです」
「そんな、慌てることはないよ。ゆっくりでいいんだ。今は目を休めて、大事にするんだよ」