代償としての私の特殊な能力
 
しばらくすると、駆け寄る音と共に女性が泣き崩れた。

(美紗子さん?)

でも、私の声は届かない。

「愛ちゃん・・。良かった。本当に良かった」

声を詰まらせながら美紗子さんは私の手を取った。


(美紗子さん、どうしたの。仕事は?)

「こちらのしゃべることは理解されてるようですよ」

看護師さんの声。

「あぁ、はい。ありがとうございます。ありがとうございます」



美紗子さんは私の手を取ったまま、耳元で囁いた。

「愛ちゃん、ホントに良かった。よく、戻ってきてくれたね。・・ありがとう」

(美紗子さん・・・)



私は美紗子さんのことを誤解していたのかもしれない。

もっとクールな人だと思っていた。

仕事も家庭もテキパキこなす、クールでカッコいい人。

そんな人だと思っていた。


「フフ、お父さん、悔しがるわよ。愛が目を覚ましたとき、絶対そばにいるんだって言ってたから」
 
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