純白の翼



「駄目!!」

覚悟を決めた瞬間、赤毛の少女が空から降ってきた。
綾野が、ぴたりと止まる。
漆黒のゴスロリに、白いレースと深紅のリボンが風で広がる。
服は破れ、背中からは大きな翼が現れていた。

何故

彼女が

ショートカットの髪が風で揺れる。
「この人間は、私の大切な人。
殺せば、私が許さない!」
そう叫ぶと、彼女は、風の弾丸をとばす。
宙に飛び上がり、かまいたちを連続で叩き込み、翼で綾野の体を打つ。
綾野も強いと思っていたが、桁違いだ。
空を飛べるとは、こういうことなのか。
純粋に、行動の範囲も、戦術も広がる。
このままでは、綾野が死んでしまう。
相当な苦戦で、動きがだんだん鈍っているのだ。
「風花!もういい!!」
僕が必死に叫ぶと、彼女が振り向いた。

その時だった。
綾野の爪が彼女の腹を突き刺したのは。
< 53 / 77 >

この作品をシェア

pagetop