純白の翼
「俺からどうして逃げるのかな?」
綾野は、すかさずドアを固定し、厳しい目で上条の顔を覗き込んだ。
「…………………。」
無言の攻防は、最終的には綾野の勝利に終わったらしく、上条は俯いて三善の後ろに隠れた。
「虐めちゃだめだろ~、零。」
「俺は虐めてなんていませんよ。この人間に虐める価値があるとでも?」
「………………お姉ちゃんと仲良くしてないと知ったら悲しむだろうな~。」
綾野は、返す言葉に詰まったようで、険しい顔のまま、上条に近づいた。
びくっとする彼女の腕を掴むと、綾野は低い声で
「……こんばんは。」と言った。
「こんばんは…」
小さな声で少女は返すと、顔を背ける。
部屋の痛々しい空気に、僕は何かを感じたが、とても口を挟める状況じゃなかった。