純白の翼


沈黙を破ったのは、三善の能天気な声だった。
「さ、若者諸君。本題に戻れるかな~?」
三善は、僕を指差した。
「近藤君、早乙女ちゃんをそこに下ろしてね~。」
服の山の上を三善は指す。
一瞬ためらったが、重みに耐え切れず、僕は風花をゆっくりと下ろした。
血の気の無い青白い顔が暗がりに浮かび上がる。
僕は、その冷たい頬を優しく撫でた。
「唯、僕らはね、ようやく手に入れたのですよ。
早乙女ちゃんの血液を。」


「本当ですか!?」
唯は、目を輝かせた。
「君さえ良ければ、計画はすぐに実行できるだろうね?」
「はい!準備は出来てますっ」

三善は、ポニーテールを束ねていたゴムを外した。
長髪を取り出した紐で結わえ直す。
唯に手渡された紺色の装束を羽織ると、
「さて、唯。道具を出してくれ。」
先程とは全く似ても似つかない臨とした声で三善は言った。
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