純白の翼
三善は、ぱんっと手の平を打ち付けた。そこから放出される波動が千秋にあたる。
近藤千春の髪が、舞い上がり、さわさわと動いた。
少しだけ色素の薄い焦げ茶の瞳を開ける。
そこに居たのは、千春だった。
「気分は?」
「…微妙。」
げっそりといった効果音がぴったりな千春に、三善は苦笑した。
「いきなりの同化はやはり難しいか。」
「三善、後でしっかり僕に説明しろよ。わけが分からない。」
「了解。上条さん、儀式の準備は?」
「後、これだけですっ」
唯が、腕一杯に抱えた本と瓶と袋を持ってくる。
床に置かれたそれらの怪しげな物に千春は少々引いた。
「全部、計量済みです。」
「よし、じゃあ始めるか。」
三善は手際良く唯の指示に従って魔法陣を描き出す。
巨大かつ複雑なそれをフローリングにチョークで描くと、唯の持つ瓶の中の液体を振り撒く。
三善は、短刀を手にすると、ろうそくが揺らめく陣の中へと歩みを進めた。