純白の翼
「我、汝の主とならん。我が名は清隆。出でよ、闇に巣食う空の子よ!」
短刀を掲げ、三善は叫んだ。
詠唱を終えると、唯の手に持つ本のページがばらばらとめくれ、突風が起こった。
あまりの強さに、思わず千春は瞳を閉じる。
始まりと同じく、風が止むのは突然だった。
割れたガラスの破片が降る部屋の中央に、一人の天使がいた。
それは、白い翼を持つ、美しい少女だった。
血のように紅い唇に青白い肌。
「三善、きよたか……。」
少女はじっと三善を見つめる。
「よく呼び出しに応じてくれたね。」
「貴方にあえるなら…。」
千春は、少女の瞳に、息を呑んだ。
それに込められた尋常でないほどの想い。
「約束を果たしてもらうよ。」
「はい。」
三善に手渡された瓶の中の血を、少女は指に一滴落とすと何かを呟いたようだった。
その後に口に血を含むと、少女は目を見開いた。
「分かったかい?」
「…………ええ。」