純白の翼
「記憶を継承しました。この血液の持ち主は、
イアリという名の一人の堕天使です。」
「混血の少女の物ではないのかい?」
「この血には、イアリの記憶しか在りませんでした。」
部屋の空気が凍りついた。
「だって、その血の持ち主って…」
「早乙女さんの物です。」
唯が、震える声で言った。
千春が振り返ると、上条が青ざめて本をきつく抱きしめながら立っていた。
「三善先生は、早乙女さんの血を調べたんです。」
ちょっと待てよ、じゃあ、まさか風花の父親って…
「近藤君、君の予想通りだ。私は常々疑問に思ってたんだよ。
何故、早乙女さんは堕天使と天狗という相反する血液で生きていられるのか、幼い彼女を父親が置き去りにした理由は何なのかと。」
三善は、暗闇のなか、瞳を光らせた。