純白の翼
「私は仮説を立てた。
もし、娘のために父親が自分の血と取り替えてしまっていたとしたら、と。
もう亡くなってしまった最愛の人との子が冒される運命だった病を自分の身に引き受けていなくなったとしたら。」
それまで黙っていた綾野が、口を開いた。
「そもそも、妖の末裔が聖なる者との子を産むこと自体が自殺行為だ。出産で弱った体では必然的に浄化されてしまう。」
「私は今のでこの仮説を確信したよ。ティア、君にも感謝する。」
「きよたか。私の望みを。」
三善は、少女に向き合った。
「ティア。君には大分待たせた。」
「きよたか。私は貴方に出会えて幸福でした。」
少女は、白い翼を大きく広げた。
三善は彼女に向って優しく笑うと
手にしていた短剣をティアの胸に突き立てた―。