王国ファンタジア【雷電の民】
声が聞こえてきたほうに視線を向けると、マントのフードを目深に被り、キセルを燻らす人影があった。
その人物は腰掛けていた岩から立ち上がるとひょいひょいと身軽に俺の前まで来た。
背は俺の肩ぐらいか。口元にはあるかなしかの笑みが浮かんでいる。
「珍しいなあ…。もうここに来るんはわしぐらいや思てたのに」
よく見ればまだ若い。里の者だろうか。
「えっと君は?」
「ん?わしか?わしはしがない商売人や」
と言ってにっかと笑い、背中の行李を指差した。てっきり里の者かと思ったんだが…。確かに旅装である。
「兄ちゃんはなんでこないなとこ来たん?」
「ちょっとな…。族長殿に国王陛下からの書状をな」
「ふうん…」
俺が目的を言うと彼女は興味なさそうに呟いた。フードと身長差のせいで、この時彼女がどんな表情をしていたのか俺は知らなかった。