王国ファンタジア【雷電の民】
里の大通りをよくここにも商いに来るという商人について歩いて行く。
彼女は俺を気遣ってかゆっくりとしたペースで俺の少し先を行く。道中、彼女は俺の家族のことを散々聞いてきた。兄弟はいるのか、親はまだ生きているのか、奥さんはいるのか…などなど。
広場に差し掛かったところで、俺は違和感がした。
(なんで…こんなに静かなんだ)
正確な時刻はわからないが、まだ日は高い。雑談に興じる主婦も、辺りを駆け回る子供も、商店の主人も…。いてもおかしくないはずなのに。
なのに、何故…
(誰もいない?)
ふと死に絶えた町という言葉が浮かんだ。
そして、さらに疑問が。
(……彼女は一体?)