王国ファンタジア【雷電の民】
数週間前、俺は国王からの親書を運ぶ使者に選ばれた。宛て先は東方の山岳地帯に里を構えるという雷電の民。
ファンタジア王国に現れたドラゴンの討伐隊参加を要請するためだ。各地に俺と同じような使者が派遣されている。
もうどれくらい前になるだろうか。ドラゴンが我が国を襲いはじめたのは。
その被害は大きく、中でも王都の被害は甚大だった。常駐の部隊では太刀打ちできず、俺達に出来ることと云えば、民の避難誘導と救助が主。無力感に苛まれた。
俺達だってただやられるのを手を拱いて見ていただけではない。あの手この手で、倒すことが出来ないなら追い返そうと工夫をこらし、ドラゴンの襲撃に立ち向かった。
だが、策は尽く実らず俺の仲間も部下も次々に死んでいった。俺だって、今生きていられるのが不思議なくらいだ。