王国ファンタジア【雷電の民】
side クラウン
少し。
少しだけ。
昔を思い出した。
長の墓の前でぼんやりとキセルを燻らせる。
あん時もそうしたっけか。
もう自分以外生きる者のいなくなった里で。
この疫病で死んだみんなの墓標を造って。
そんで。
一番最後に死んだ兄ぃにが最期に創ったこの最高傑作を。
手の平を見る。ぎゅっと握ってゆっくりと開く。ぱちぱちと音がして小さな雷の玉が開いた掌に現れる。水分を含んだ風を纏ったそれはほかの雷電の民にはない力。